Vol.37 Music meets… Seelではこれまでさまざまなテーマを扱ってきました。今回の新刊Vol.37に至るまで、カルチャー志向の雑誌を名乗って気づけば10年そこそこ、いわゆる身近なカルチャーである「ファッション、映画、音楽」はすでにやりきったんじゃないか、むしろ段々とニッチなテーマに手を出していくんじゃないかと思われることもあります。Seel本誌のバックナンバーにはVol.20『ラップをしよう』、Vol.26『アイドルは好きですか?』など、ラップやアイドルのシーンに特化した号があります。しかし、ファッションや映画と違い「音楽」そのものについて正面から向き合った号は、実はまだありませんでした。それもそのはず。「音楽」という、無限に広く深く、曖昧なジャンルをただの1冊にまとめる、そんな企画を成立させるのは、かなり難しいものです。なんてったって、文化系、しかもフリぺサークルの大学生なんて、内に秘めているこだわりが強いに決まっているし、そもそも部員の音楽の嗜好が違いすぎて、どの文脈から音楽を取り扱っても、ぶったぎられるにちがいないのです。しょうがないので、改めて「音楽って何だろう?」と立ち返って考えてみるところからはじめることにしました。ポツ、ポツ、と鳴る単音が連なっていくと、徐々にひとまとまりのフレーズとなり、ストーリーを纏うように音楽となっていく。その様子は自分自身自身そのもので、日々の一瞬一瞬が、時間の流れを伴って積み重なるうちに、人生となっていく。今号では、こんな風に音楽を解釈してみました。「音楽」と「人生」を似た構造のものとして語ってみたくなりましたね。この思いは目次すぐの見開きページ、そしてあとがきにひっそりと込めています。音楽は、みんなで楽しめたり、コミュニケーションツールである一方、音の波が耳に入って感情が揺さぶられるという体験自体を切り取ると、音楽を聴くことが、実はごく個人的な行為であることに気づかされます。すべての人が共通して持つ、ごく個人的な体験。今号はこの点に着目して、音楽との関わりを考えていきます。最近音楽聴いてないなぁ、という人も、「三度の飯より音楽」という人も、本誌を通じて、音楽と向きあう「自分」を再発見してもらえると嬉しいです。今後とも「音楽のある生活」を楽しんでいくために。